琵琶湖を中心に東西南北に分けられる滋賀県。特に北部地域(長浜市、高島市、米原市)では、メタセコイア並木や黒壁スクエア、伊吹山など、自然と歴史を活かした観光スポットが人気です。
たくさんの魅力がある一方、これから地方が直面しそうな課題が少しずつ現れ始めている地域でもあります。
そこで滋賀県では、2023年度から滋賀県北部地域の豊かな自然や歴史・文化遺産など、地域の特性や魅力を活かしたさらなる地域振興策として「北の近江振興プロジェクト」の取組を開始しました。
8月26日には、三日月大造・滋賀県知事が対象地域のひとつ、高島市を視察。web滋賀プラスワン編集チームが「三日月知事の『北の近江』現場訪問!in高島」に同行してきました!
“北部振興”とは?
“北部振興”とは、滋賀県の北部地域(長浜市、高島市、米原市)の魅力的な自然や歴史・文化遺産などを活かして地域を盛り上げようという取組です。
人口減少や高齢化など、これからの時代に起こりそうな課題がいち早く見え始めている北部地域。このエリアを活性化させる取組が、滋賀県全体を盛り上げるためのモデルになるのでは?と考え、「北の近江振興プロジェクト」が始まりました。
プロジェクトの始動とともに、「三日月知事の『北の近江』現場訪問!」と銘打ち、北部地域活性化のヒントを探ってきた三日月知事。今回は、高島市の湖西線沿いにある歴史、文化スポットを訪れ、地域の方と様々な意見を交わしました!
リニューアルした近江今津駅へ!商店街のアーケードをどう活かす?
まず訪れたのは、リニューアルされたばかりの近江今津駅。天井には、琵琶湖と自然をイメージした「高島ちぢみ」のアートがダイナミックに施されています。
ちなみに、この日知事が着用しているシャツも高島ちぢみでつくられたものです!
待合室に設置されたデジタルサイネージでは、地元の名物や観光スポットを紹介する映像が流れています。
こちらは駅の構内にあるストリートピアノ。「音楽を通じて町を元気に」という思いから設置されたもので、もちろん誰でも演奏することができます!
よく見ると、本体部分には梅津大崎の桜やメタセコイア並木、鍵盤の蓋にはビワコオオナマズやビワマスがラッピングされていて、この1台に、高島市の魅力がぎゅっと詰まっています。
近江今津駅を後にして向かったのは駅のすぐ目の前にある「名小路(なこうじ)商店街」。
高島市内で唯一の屋根付きアーケードがある商店街で、昭和レトロな趣があります。
ここでは「湖西線と駅前商店街の活性化」について、地域のみなさんと意見交換を行いました。
参加者のみなさんからは、
「駅前に屋根付きの商店街があるのがこの町の魅力。やみくもに空き店舗対策をするのではなく、『天気や季節を気にせずイベントができる魅力的な場所』としての利用をすすめることで、商店街そのものが元気になればいいなと思います」
「この辺りは合宿に来る学生さんが多い。若い人に高島のよさを知ってもらえたら、大人になって『また行きたい!』と思ってもらえるのでは」
「春は海津大崎の桜、夏は湖水浴、秋はメタセコイア並木の紅葉や果樹園など、高島には四季折々の魅力があります。近年は積雪不足で冬のレジャーがちょっと弱いので、“雪”をテーマに何かできたらいいな」
「高島に住む人が増えるには、まちの盛り上がりが必要。高島は盆踊りが盛んなので、祭りが好きな方は移住の決め手の1つなり得ると思う。今は関係団体だけでがんばっているけど、行政や地域の人と一緒になってもっと盛り上げていけば地域活性化につながるはず」
といった、あらゆる視点からの意見があがりました。
歴史と自然を堪能できる「大溝の水辺景観」
続いては、近江今津駅から電車で南に10分の近江高島駅周辺へ。
織田信長が天下統一の足がかりとして甥の信澄に築かせた「大溝城」の本丸跡を見学します。
案内人は大溝の水辺景観まちづくり協議会事務局の仁賀さん。地域の「まち歩きガイド」をされています。
信長は、長浜城、安土城、坂本城、大溝城の4つを結ぶことで、琵琶湖を活用した軍事的な「琵琶湖ネットワーク」を構築していたと考えられており、天気のいい日はここから安土城が見えたのだとか!
大溝城は乙女ヶ池を天然の水堀として利用した水城で、大溝城跡とまわりの集落などを含む「大溝の水辺景観」は、文化庁の「重要文化的景観」、そして「日本遺産」のひとつにも選定されています。
この立派な門は、大溝藩で武家屋敷地への正門として使用されていた「大溝陣屋 総門」。展示スペースでは、大溝城をCGで再現した動画を見ることができ、「案内処」では地域の魅力を発信しています。
400年以上続く「大溝祭」や、毎年10月に開催される「大溝まちづくりマルシェ」など、地域住民が主体になってさまざまな活動が行われている大溝。「この地域の課題は?」という三日月知事の質問には、
「乙女ヶ池は、太鼓橋もかかったりしてすごくきれいな場所になりました。でも、すぐ側にある大溝城跡に登ってまわりを見渡した時、必ず目に入る草に覆われた耕作放棄地が残念。きれいに整備して公園を作るなどして、たくさんの方に訪れていただきたい」
「大溝城は、2028年に築城450年を迎えます。石垣だけでなく、そのまわり全体を大溝城跡として、みなさんに見ていただけるように整えられれば」
など、大溝城跡の整備を願う地域の方々の声が聞かれました。
三日月知事に、今日の感想をインタビュー!
最後に、三日月知事に今日の感想と、得られたヒントについて聞いてみました!
「北部振興として、まずはここに住んでいるみなさんに『いい町やな』、『ずっと住み続けたいな』と思ってもらえるような取組ができたらと思います。今日、名小路商店街のみなさんや、大溝の歴史と自然を活かした魅力発信に触れて、ほかの地域にはない可能性を感じました。県としても応援をして、高島市のみなさんと一緒にさらに盛り上げていけたらいいなと思います」
同じ滋賀県でも、南部に住んでいると「北部ってどんなところだろう?」と思う人も多いのではないでしょうか。
琵琶湖が中心にある滋賀県は、エリアごとに違った町並みや文化に触れられるのが魅力です。北部地域の魅力を知るには、まずは訪れてみるのもいいかもしれません!
北部振興を通じて、滋賀県全体をみんなで盛り上げていきましょう!
名小路商店街
住所:滋賀県高島市今津町名小路1丁目1−4 (JR近江今津駅西出口から徒歩2分)
大溝城跡
住所:滋賀県高島市勝野 (JR近江高島駅から徒歩5分)
大溝陣屋総門
住所:滋賀県高島市勝野1688 (JR近江高島駅から徒歩5分)
定休日:水曜日
電話番号:0740-36-2011 (大溝の水辺景観まちづくり協議会事務局)
(文・林由佳里/撮影・山中隆史/編集・しがトコ編集部/動画編集・大塚慎也)