環境・防災

ダムってなんのために水を貯めてるの?姉川ダムで聞いた、大雨の前に知っておきたい防災の最新事情

2024年07月03日

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景色がきれいで、迫力満点、近ごろはツーリングやサイクリングで訪れる人も増えている、ダム。ところでダムって、なんのために水を貯めているか知っていますか?

そういえば梅雨から夏にかけてのこの時期、ダムの貯水量の話をよく聞くような…ということで、じつはあまり知らないダムのこと、まずはクイズで考えてみましょう!

何問わかる?滋賀のダムクイズに挑戦!

突然ですが、クイズです!
滋賀県内にダムはいくつあるでしょう?
(このクイズでは一級河川に設置されているダムを対象としています)

青土ダム洪水吐
こちらは甲賀市にある青土(おおづち)ダム。2つの洪水吐がある世界的にもめずらしいダムです。貯水位が292mを超えるとこのような景色が見られます。(青土ダムの貯水位はこちらをチェック!

正解は、10個! 
余呉湖、姉川ダム、犬上川ダム、宇曽川ダム、永源寺ダム、日野川ダム、蔵王ダム、野洲川ダム、青土ダム、石田川ダムがあります。

では、その中でいちばん水を貯めることができるダムはどれ?

A.青土ダム
B.姉川ダム
C.永源寺ダム

姉川ダム
米原市にある姉川ダムの高さは80.5メートル!21階建てのビルと同じ高さです

正解は、永源寺ダム!
貯水量は2274万㎥で、25メートルプール約54,000杯分だそうです。スケールが大きすぎて想像できません…

では、ダムがたくさんの水を貯める役割はなんのため?

A.飲み水や農業に使う水を貯める
B.大雨の時に川の水を調節する
C.電気を作る

うーん、だんだん難しくなってきました。
ということで、実際のダムに行って職員さんにお話を聞いてみました!

知っているようで知らないダムの世界

今回訪れたのは、姉川ダム。米原市の伊吹山よりもさらに奥にある、姉川の上流に作られたダムです。

姉川ダム管理事務所の橋本さん
姉川ダム管理事務所の橋本さん

「ダムが果たしている役割のひとつは『治水(ちすい)』です。治水とは、大雨が降った時に川の水があふれないように、下流に流す水の量を調整したりすることです。長浜市にある余呉湖は厳密にいうとダムではないのですが、ダムと同じような働きをするため、治水に役立っています。もうひとつ『利水(りすい)』という役割もあって、私たちが生活するための飲み水や農業に使う水を確保したり、ダムから流す水の力を水力発電に役立てたりしています。姉川ダムは、治水と利水、両方の目的を持った『多目的ダム』なんですよ。ちなみに先ほどのクイズで出ました永源寺ダムは、農業用と発電用の利水のみを目的としたダムです

先ほどのクイズの答えはなんと…全部!
ダムって、ただ単に水を貯めているだけじゃなかったんですね。

写真右:姉川ダム管理事務所の藤居さん
写真右:姉川ダム管理事務所の藤居さん

「たとえば梅雨や台風で大雨が何日も続くような時は、ダムに入ってくる100の水の70を貯めて、30だけ下流に流すといった調節をして、洪水などの災害を防いでいます。それでもさらに雨が続いて、ダムがあふれそうになった時に起こるのがダムの『緊急放流』です」

「緊急放流」?聞いたことがあるような、ないような…
ダムの水を一気に放出するんでしたっけ?

「いえいえ、そんなことをしたら下流は大変なことになります。緊急放流とは、上流からダムに入ってきた水とほぼ同じ量の水をそのまま下流に流すこと。満タンになったお風呂に水道から水が注がれ続けているのと同じ状態です。よく勘違いされますが、ダムに貯めた水を一気に放出したり、ダムを空にしたりすることではないんですよ」

非常用洪水吐
緊急放流時には、ダムの上部にある4つの長方形の隙間「非常用洪水吐(ひじょうようこうずいばき)」から水があふれるそう

「緊急放流で使う非常用洪水吐は、今、水が排出されている穴よりさらに20メートル上にあります。穴の床面0メートルとしたら、先日の大雨で増えた貯水量はプラス10センチ。昨年の最高水位はプラス3メートルでした」

警報級の大雨で、たったのプラス10センチ!? ダムの貯水量って本当にすごいんですね。

「本来、緊急放流はめったにないことで、滋賀県ではまだ一度も起こっていません。でも最近は、線状降水帯の発生などでこれまでにない量の雨が降り、全国各地で緊急放流が行われるようになっています

ダムの下流
ダムの下流にはたくさんの民家が。水量を適切に管理することで、人々の暮らしが守られています

「また、ダムの下流に住んでいると『ここはダムがあるから大丈夫』と思いがちですが、かつてない大雨は今後いつくるかわかりません。緊急放流の可能性があることを忘れずに、市役所や役場からの情報をしっかり聞いて、早めの避難を心がけてください」

増水注意喚起看板
上流にダムがある川には、人が立ち入りやすい場所に増水注意の看板が設置されています(設置場所はこちら

川沿いで見かける、この看板は?

「天気がいい日でも、川の上流で雨が降ると下流の水位が急に上がることがあります。油断して遊んでいると、中洲に取り残されたりする危険性も。川のそばでキャンプなどをする時は、晴れているからといって安心せず、放流を知らせるサイレンなどに気を配っていただくよう、看板で注意喚起をしているんですよ」

なるほど…遊んでいても、まわりをよく見ておくことが大切なんですね。

それにしても、巨大なダム。中はどうなっているのかな…と考えていると、「今回は特別に」とダムの内部を見せてもらうことができました!

ダム内部
ダムの内部にある通路に潜入!

ここは水をせき止めている壁の内部にある「監査廊(かんさろう)」という通路。壁面にひび割れや水漏れがないか、人が歩いて点検できるようになっています。ダムの端からからいちばん底まで下りて、また反対側の端まで上がれるようになっているそうで、圧巻のスケールです!

今回は内から外から、ダムの役割や大雨の時の避難まで、じっくり学ばせていただきました。

橋本さん、藤居さん、ありがとうございました!

すぐに役立つ!県が運営する防災システムをご紹介

ダムが私たちの暮らしを守ってくれていることはよくわかりました。

では、これからの雨が増える時期、私たちはどのような情報を確認して避難などの行動を取ればいいのでしょう?

滋賀県土木交通部 流域政策局 中西さん
滋賀県土木交通部 流域政策局 中西さん

滋賀県が運営している防災システムについて滋賀県土木交通部流域政策局で聞いてきました。
“リアルタイム系”と“日ごろからの準備系”に分けてご紹介します!

防災システム“リアルタイム系”

しらしが

リアルタイムの防災情報が得られるイチオシのサービスが、「しらしがメール・しらしがLINE」です。リンク先からLINEやメールでユーザー登録をするだけで、住んでいる地域の防災情報が届くようになる便利なサービス。

しらしが地域別気象警報
ユーザー登録に、名前などの個人情報は不要。住んでいる地域やほしい情報を選ぶだけで簡単に登録できます

スマートフォンなどに通知が届くので、テレビやラジオがチェックできない時も、すぐにまわりの危険に気づくことができます。

しらしが川の水位
気になる川の水位も、リアルタイムで知ることができます

地域を選んで登録できるので、職場が離れていても「今日は安全のために早く帰ろう」とか、離れて暮らす実家の両親に「早めに避難するよう連絡を入れよう」といった行動に繋げやすいのもいいところ。

あらかじめ登録をしておいて、スムーズな避難行動を心がけましょう!
また、このサービスが2024年2月にリニューアルされています。
それ以前から利用していた方は再登録が必要ですので、ご注意ください!!

滋賀県土木防災情報システム

しらしがメール・しらしがLINEで送られてきた内容をもっと詳しく知りたい時は、メッセージのリンク先にある「滋賀県土木防災情報システム」のWebサイトを見てみましょう。

こちらのサイトでは、県内各地に出ている警報や、主要な川に設置されたライブカメラの映像をリアルタイムで見ることができます。

滋賀県土木防災情報システム

「しらしが」に登録して危険に気づき、「滋賀県土木防災情報システム」で詳しい状況を把握する。普段から自分で情報収集することに慣れておけば、いざという時もすぐに行動できそうです! 

防災システム“日ごろからの準備系”

滋賀県防災情報マップ.

災害に備えて、日々のスキマ時間にじっくり見ておきたいのが「滋賀県防災情報マップ」。特に雨が多いこの時期は「水害・土砂災害リスクマップ」を開いて、自分の住んでいる地域で洪水が起きたらどれくらい浸水するのか、通勤や通学で避けるべき道はないかなど、あらかじめチェックしておきましょう。

滋賀県水害情報発信サイト.

「とはいえ、滋賀県は災害が少ないから大丈夫でしょ?」そう思う人にこそ見てほしいのが「滋賀県水害情報発信サイト」。このサイトでは、滋賀県で実際に起きた災害の記録や経験者の声を知ることができます。

たとえば明治29年に起きた「琵琶湖洪水」では、琵琶湖の水位が約4メートルも上がってまわりの集落が何ヶ月も水没したのだとか。「今は堤防も整備されているし、安全では?」と思ってしまいそうですが、温暖化による集中豪雨などが増えた現代の方が危険という見方もあるようです。

防災力をアップデートしよう!

姉川ダム

「ダムってすごい!」という驚きから、今知っておくべき防災の最新事情まで知ることができた今回の取材でした。

梅雨に入るこの時期、洪水や土砂崩れといった自然災害はいつ起きてもおかしくありません。いざという時慌てずにすむように、日々進化している防災システムなどを活用し、防災力をアップデートしていきましょう!

(取材・文・林由佳里/写真・竹内恵/編集・しがトコ編集部)

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