#文化

広い空が育てた音。滋賀から世界へ、ピアニスト・久末航さんインタビュー

2025年12月05日

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琵琶湖のほとりで育った少年が、今や世界が注目するピアニストに__。

世界を代表するピアノコンクール「エリザベート王妃国際音楽コンクール」で、日本人として最高位となる第2位を受賞した久末航(ひさすえわたる)さん。

穏やかな笑顔の奥には、滋賀の自然や人のあたたかさに育まれた感性が息づいています。
「滋賀の空の広さやおおらかな空気が、インスピレーションになっているんです」と久末さん。

滋賀から世界へと大きく羽ばたく、久末さんに音楽とふるさとへの想いを伺いました。

世界最高峰の舞台で感じた“楽しさ”

© Thomas Léonard

ベルギー・ブリュッセルで開催される「エリザベート王妃国際音楽コンクール」。
ショパン国際ピアノコンクールと並び、世界で最も権威あるコンクールのひとつとして知られ、世界中の才能が集う大舞台です。
そこで2025年、久末さんは日本人として歴代最高位の第2位に輝きました。

© Thomas Léonard

「国際コンクールのファイナルとなるとカメラもすごく多くて、めちゃくちゃ緊張するだろうなと思ってたんですけど、いざあの舞台に出ると、すごく楽しめたんです。前向きな気持ちで弾けたので、それがなにより嬉しかったですね」。

重圧のかかる世界大会の舞台で“楽しむ”ことができた背景には、支えてくれた人たちの存在がありました。

「コンクール前に母が“なるようになる”と言ってくれたんです。その言葉にも救われましたね」。
自由に挑戦を見守ってくれた家族の姿勢が、久末さんの音楽の原点にもつながっています。

音楽との出会いは、母のピアノから

ピアノとの出会いは、幼いころに母が弾いてくれた童謡や唱歌でした。
「家に電子ピアノがあって、小さい頃に母がよく弾いて聴かせてくれていたんです。それを聴いて自分でも“弾いてみたい”と言い出したのが最初です」。

5歳からピアノを習い始めることに。久末さんの“音楽の広がり”を支えてくれたのは、小学生のころの先生だったといいます。

「僕自身は好奇心旺盛なタイプなので、小学生の頃はピアノ練習が嫌なときもありました。でも、当時の先生がピアノだけをやりなさい、というタイプじゃなくて、トロンボーンやフルートの伴奏をさせてくれたり。いろんな楽器と関わることで、“音楽って広いんだ”と感じられました」。

小学校6年生のころ、先生が変わったのをきっかけに本格的にコンクールへ挑戦を始め、音楽の道が少しずつ形になっていきました。

滋賀が育てた感性

生まれ育ったのは、大津市小野エリア。
「山もあって、湖もあって、空が広い。自然の豊かさは、今でも自分のインスピレーションになっています」。

小学6年生のときには、びわ湖ホールの大ホールで京都市交響楽団と共演する機会にも恵まれました。

「子どものころから、人に聴いてもらいたい欲が強くて、家で練習するときも窓を開けて弾いてましたね(笑)。自分の気に入った音を、人と共有したいという気持ちが昔からありました」。

膳所高校時代には、久末さんの音楽をさらに広げる出会いも。
「さまざまな志をもった友人と出会い、音楽だけじゃない世界を見れたのは大きかったです。びわ湖ホールのみなさんをはじめ、いろんな方に応援していただきながら育ててもらったと思っています」。

滋賀ならではの“空の広さ”や“人の大らかさ”。
それが久末さんの音色にも表れているのかもしれません。

ベルリンで学んだ“人とつながる力”

高校卒業後はドイツへ留学。初めての海外での一人暮らしは、言葉や文化の壁もあり苦労の連続だったそうです。

「ドイツ語はほとんどできない状態で行きました。最初はコミュニケーションもうまくいかなくて。でも、一人で抱え込まず、人に頼ることも大事だと学びました。音楽の世界は、人との出会いで成り立っています。支えてくれた人たちへの恩返しのつもりで、このコンクールにも臨みました」。

結果としての受賞は、久末さんにとっても“恩返しのひとつの形”。

受賞の報告に三日月知事を表敬訪問した際も、久末さんは「応援してくれた人たちに感謝の気持ちを伝えられたことが嬉しかったです」と穏やかに話していました。


ふるさとで演奏できる日を楽しみに

ベルリンを拠点にしながらも、2か月に一度は日本へ帰国し、そのたびに滋賀にも立ち寄るという久末さん。

ベルリンでのコンサートの様子

「滋賀に帰ると、やっぱり空が広いなぁと感じます。これからも自分が大事にしてきたものは見失わずに、演奏を続けていきたいですし、滋賀で演奏できる機会を楽しみにしています。そして、少しでも滋賀の文化に貢献できたらいいですね」。

最後に、音楽を志す子どもたちへのメッセージを尋ねると、久末さんはゆっくりと言葉を選びました。
「音楽だけに集中しすぎず、いろんな経験をしてほしい。苦労したり、失敗したりすることも糧になります。何より、“人とのつながり”が一番大切だと思うんです」。

滋賀の空の広さ、人のあたたかさ、そして多くの出会い。
そのすべてが、久末さんの音を豊かにしてきたのかもしれません。

これからますます世界で活躍の場を広げていく久末さんですが、12月には滋賀のびわ湖ホールでのコンサートが予定されています。
世界を魅了する音色を、ぜひふるさとで体感してみてください。

びわ湖ホール 公演情報

大津ロータリークラブ 創立75周年記念ガラ・コンサート「大津新世界」

日時:2025年12月13日(土)  14:30開演(13:45開場)
会場:滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール

びわ湖ホール ジルヴェスター・コンサート 2025

日時:2025年12月31日(水)  15:00開演(14:00開場)
会場:滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール

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