#一人ひとりの大切な人権 #子育て #暮らし

「冗談だったのに」では済まない。スマホ画面の向こう側で起きていること

2025年12月03日

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SNSや動画サイト、グループチャット。私たちは毎日、スマートフォンを通じて誰かとつながっています。でも、その「気軽さ」が、思わぬトラブルを生むことも。
書き込んだ本人は軽い気持ちでも、相手を深く傷つけてしまうことがあります。

今、どんな相談が増えているのか?
どんな行動がトラブルのきっかけになるのか?
もし自分や家族が巻き込まれたら、どうすればいいのか?

そこで今回は、滋賀県の人権施策推進課で、インターネット上で増えている人権トラブルの”今”を聞いてきました。

良かれと思った投稿が問題になることも…

まずは、実際に起きたトラブルをご紹介します。


【ケース1】ネットの情報をみんなに教えたら…(誤情報の拡散)

SNSで「被災地で外国人による略奪が多発している」という投稿を見かけたAさん。「これは拡散しなきゃ」と、すぐにリポスト(シェア)しました。
でも実は、その情報は事実ではなかったんです。

「インターネット上には、真偽が不明の情報やデマが本当に多くあります。誰かになりすました人から、ニセの情報が発信されることも。真偽を確認せずに拡散してしまうと、人の心を傷つけたり、場合によっては人の命を危険にさらしてしまうことがあります」

【ケース2】ちょっとした冗談のつもりが…(誰かを傷つける投稿)

友達とのグループチャットで盛り上がっていたBさん。ノリで「あいつマジ気に入らない。SNSに匿名で悪口を書いて嫌がらせしてやろう」と投稿しました。
その結果、相手は深く傷つき、最終的には名誉毀損で訴えられることに…。

「例え冗談だったとしても、内容や文脈によっては人権侵害に当たる場合があります。一度発信された情報は一瞬で世界中で見られるようになり、回収・削除することは困難です」

一度広まった情報はすぐに回収できないのがインターネット。意図せずトラブルに巻き込まれてしまう危険性もあります。

実際、法務省の人権擁護機関には、令和6年だけで1,707件ものインターネット上の人権侵害相談が寄せられました。どんな投稿がトラブルにつながっているのでしょうか。

・見た目や個性を揶揄する言葉
・外国人やマイノリティに対する偏見を含んだ投稿
・個人を特定できる内容を含む批判
・正義感から相手を断定し、”晒す”行為
・匿名だから大丈夫だと思い、感情のまま書き込んだ投稿

こうした投稿が、相手に大きな負担を与え、最終的には生活の質や心の健康に影響が及ぶこともあります。

「これが当たり前」と思い込んでしまう、SNSの危険

もうひとつ、知っておきたいことがあります。それは、SNSを使い続けるうちに情報に偏りが起こること。

「SNSって、自分が興味を持った投稿や、過去に反応した内容に似た情報が次々に表示される仕組みになっています。同じような投稿ばかりがタイムラインに並んでいる…そんな経験、ありませんか?」

たしかに。気づくと似たような内容ばかり見てる気がします。

「それを毎日見続けているうちに、『これが世の中の当たり前なんだ』『みんな同じ考えなんだ』って、無意識に思い込んでしまうことがあります」

でも実際には、違う考え方、違う背景を持った人もたくさんいるはずです。

「自分の見えている小さな範囲だけが”世界のすべて”のように感じてしまう。そうなると、違う意見を目にしたときに、つい強い言葉で反応してしまう。これは誰にでも起こりうることです」

なるほど…自分では気づかないうちに、視野が狭くなってしまうんですね。

ひとつの事件が、法律を変えた

「数年前、リアリティ番組に出演していた女性が、SNSで激しい誹謗中傷を受けて、みずから命を絶つという悲しい事件がありました」

このニュースは全国に大きな衝撃を与えました。「インターネット上の誹謗中傷は、人の命を奪う深刻な人権侵害である」という認識が、社会全体に広がるきっかけになったそうです。

「この事件を受けて、国では法律の見直しが行われました」

侮辱罪の厳罰化
罰則が引き上げられ、拘禁刑も適用されるようになりました。

投稿者の特定が容易に
SNS運営会社への情報開示手続が簡素化され、より迅速に投稿者を特定できるように。

「つまり、『匿名だから大丈夫』という時代は、もう終わっています」

県内のマクドナルドで、気づいたことありますか?

滋賀県では、こうした意識を変えるため、日常的に多くの人が訪れる場所での啓発にも力を入れています。

そのひとつが、県内のマクドナルド店舗のデジタルサイネージ。

「若い人の利用が多い場所で啓発メッセージを流すことで、ほんの少し立ち止って考えてもらうきっかけになればと県では考えています」

もし、自分や大切な人が巻き込まれてしまったら

では、実際に被害にあってしまったとき、どうすればいいのでしょうか。
まず大切なのは、証拠を残すことです。

①スクリーンショットを撮って、URLを保存
投稿が削除される前に、証拠を残しておく。

②投稿先のサイト運営に削除を依頼
多くのサイトには削除依頼のフォームがあります。

③相談窓口に連絡
自分で対応するのが難しい場合は、専門の窓口に相談を。

「法務局では、削除方法のアドバイスや、状況に応じて投稿の削除要請も行っています。危険を感じる場合は、迷わず警察に相談してください」

困った時の連絡先

投稿ボタンを押す前に

日常の中で、少し意識するだけでできる3つの習慣があります。

①投稿前に、一度だけ立ち止まる
この言葉、本当に今、送る必要がある?

②感情的になったら、少し時間をおく
怒りや正義感に駆られたときほど、深呼吸を。

③違う考え方に触れる機会をつくる
自分と違う意見を読んでみる。それだけで視野が広がります。

どれも特別なことではありませんが、この3つを少し意識するだけで、インターネットとの距離はぐっと健やかになります。

画面の向こうには、誰かの日常がある

最後にご紹介したいのは、今年選ばれた人権のキャッチコピー。

『何気ない一言。誰かの人生に刻まれる。』

インターネットを使うすべての人が、この問いを少しだけ心に留めておけたなら。
きっと、スマホの向こうの世界は、もっと安心できる場所になるはずです。

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