みなさん「車いすバスケットボール」を知っていますか?
ルールは一般的なバスケットボールとほぼ同じですが、車いすを使うだけでぜんぜん違うスポーツになるんです!スピード感やぶつかりのハードさ、展開の駆け引きなどは、もしかしたらみなさんが知っているバスケットボール以上かもしれません。
しかもそんな車いすバスケ、じつは滋賀県ではとても盛んです。なんと、2024年のパリ・パラリンピックに出場した女子日本代表選手の3分の1が滋賀にゆかりのある方でした!
今回は、そんな車いすバスケを滋賀県の大学生が実際に体験!「車いすバスケはどれだけ激しいのか?」「初心者でも楽しめるのか?」など、現場に密着して取材してきました!
滋賀が「車いすバスケ」の聖地ってホント?
まず注目したいのが、滋賀県には車いすバスケの強豪チームがあること。滋賀を拠点に活動する「LAKE SHIGA B.B.C」は、近畿ブロック屈指の強豪チーム。そして、パリ・パラリンピックで日本代表女子チームのキャプテンを務めた北田千尋選手は、滋賀県栗東市在住です。
そんな滋賀県は、障害者スポーツの競技環境も充実しています。
今回の取材で訪れた「滋賀県立障害者福祉センター」(滋賀県草津市)は、車いすバスケをはじめ、水泳や基礎トレーニングなど、さまざまな競技に打ち込む選手たちの練習拠点にもなっています。
車いすバスケのルールって難しい?
じつは、車いすバスケットボールは、コートのサイズやゴールの高さ、フリースローやスリーポイントのルールは一般的なバスケとまったく同じ。しかし、違う点もいくつかあります。主な違いは、以下の3つ。
主なルールはバスケットボールと同じなので、普段からプレイや観戦をしている人なら意外とすんなりルールを理解できそうです。
まずは車いすに乗ってみよう!
今回、車いすバスケを体験するのは龍谷大学瀬田キャンパスで活動するバスケットボールサークル「龍球(りゅうきゅう)」のメンバーたち。小学生の頃からバスケットボールを続けてきた強者揃いです。
そんな彼らも、車いすバスケは初体験。それどころか競技用の車いすに乗るのも今日が初めてだそう!
「車いすって、意外とスピード出るな」「待って、ブレーキついてへんやん!」と興味津々に、まずは車いすに乗る練習からスタート。
大学生を指導してくださるのは、北田千尋さんと、「LAKE SHIGA B.B.C」の平田博之さん、木村正也さん、小島慎弥さん。
みなさんトップ選手だけあって、練習を見ているだけでもスピード感がすごい!
試合前に、まず車いすの基本操作を学んでいきます。
「ブレーキがないから、止まるときはタイヤをしっかり握って」
「バンパーが付いてるから激しくぶつかっても大丈夫!安心して」
教え上手な北田さんの指導に、大学生たちも楽しく体験をしていきます。
みんな、とっても飲み込みが早い!ということで、北田さんの指導も徐々にヒートアップしていきます。
「もっとスピード出せるよね!」
「怖がらない、怖がらない!」
「ぶつかることを恐れない!もっと激しく!激しく!」
さすが日本代表キャプテンを務める北田さん。チームに活を入れていきます。熱のこもった北田さんの指導を受けて、大学生たちもどんどんレベルアップ!
大学生 vs トップ選手、いざ対決!
大学生たちもバスケットボール経験者なだけに、上達が早い!
そこでいきなりですが、大学生4人とトップ選手4人、4対4の特別ルールで試合をしてみることになりました。
今回はハンデとして、大学生チームにはトラベリング無し。つまりボールを持ったら、ゴール下まで走っていってOKです。
そして、トップ選手が負けたら「焼き肉を奢ってあげる!」というハンデマッチになりました。さて、どんな試合になるのでしょう。
さあ、ティップオフ!
まずボールを持ったのはトップ選手たち。驚くのはそのスピードです!ボールを持ってからゴール前まであっという間に進みます。車いすって、こんなにも早く動けるんですね!
さらに、片手で車いすを操作しながらもう片方の手でボールをドリブル。目の前にいるディフェンスを鮮やかに抜き去っていくテクニックも必見です。トップ選手の身のこなしから、目が離せません!
そして、選手の個性や障害レベルを活かした戦術もあるそう。見れば見るほど、トップ選手たちの動きに圧倒されます。
一方、大学生たちも負けていません。そこはバスケをやり続けてきた意地として、チャンスがあればシュート!普段と違い、下半身のバネを使えないシュートに戸惑いつつも4本のゴールを決めました。
トップ選手たちのスピードに、大学生たちの奮闘ぶり。観客からは「おおーっ!」という歓声と笑い声が絶えず、試合は終始白熱した展開に!
この様子はぜひ、動画でもご覧ください!
試合は結局、トップ選手のチームが圧勝。残念ながら、焼き肉は次回への持ち越しとなりました。
車いすバスケの魅力ってなに?
試合後、大学生たちからは率直な感想が次々と出てきました。
「いつもやってるバスケよりスピード感がある!本当にびっくりした!」
「最初は北田さんの迫力に圧倒されて…でもトップ選手からこんなに丁寧に教えてもらえる機会なんてないし、めっちゃ嬉しかった!」
「すみません、障害者スポーツを正直なめてました…。こんなにハードで、アグレッシブだったんですね。もっと上手くできるようになりたいです!」
車いすバスケは初体験だった4人も、その魅力がわかってきたようです。
北田さんからは、
「私たちとみんなの違いは、車いすの操作に慣れているかどうかだけ。もしみんなが車いすの操作が上手くなったら、もっと楽しくいい試合ができます!障害があってもなくても、車いすという道具を使えば同じルールで一緒にスポーツを楽しめる。それがわかってもらえたら嬉しいです」
「車いすバスケの魅力はスピード感と、コンタクトの激しさ。それぞれの選手が自分の得意なプレーを活かしながら、得点チャンスをつくるために動いています。スコアに残るのは得点した選手だけですが、直接シュートを打つ選手以外の『この選手のこのプレーのおかげで得点が生まれた』という場面が必ずあるので、試合を見る時は各選手のプレーにぜひ注目してください」
と、観戦のポイントも教えてもらい、これからも車いすバスケを追いかけたくなった大学生、観客一同でした!
2025年、障スポで新しい世界を見てみよう!
2025年には、滋賀県で「わたSHIGA輝く国スポ・障スポ」が開催されます。
2025年10月25日(土)〜10月27日(月)に行われる第24回障害者スポーツ大会では、車いすバスケをはじめ、陸上や水泳、卓球などさまざまな競技が実施予定。全国からトップ選手が集結し、迫力あるプレーを間近で観ることができるまたとないチャンスです!
知っている競技だけでなく、知らない競技も見ることで、新しい世界が広がるかもしれません。ぜひ大会公式ページから、競技日程をチェックしてみてください。
また、車いすバスケを始め、障害者スポーツは体験会も頻繁に開催されています。観るだけでなく、やってみることでそのおもしろさがもっと分かるかも。2025年、スポーツイヤーの滋賀県をぜひ満喫しましょう!
(文・写真:しがトコ編集部)
関連コラム:滋賀県立障害者福祉センター
今回、車いすバスケを体験する場所としてお借りしたのは、滋賀県草津市にある「滋賀県立障害者福祉センター」。障害がある人が健康に、社会と交流を持ちながら暮らせるよう1990年にオープンした施設です。
滋賀県立障害者福祉センターの特徴は、障害のある人の施設として、障害等に配慮した設備や器具を設置し、指導員全員が日本パラスポーツ協会の指導員資格を持っていること。
施設内には滋賀県で唯一の県立プールがあり、パリ2024パラリンピック日本代表の福井香澄選手や、わたSHIGA輝く障スポ大会を目指す選手たちの練習拠点にもなっています。
このような施設や指導員の方々の存在が、世界で活躍する選手たちを支えているんですね!