ユーチューバーのマーシーさんは琵琶湖を中心に、外来種の駆除を行うなど生態系保全・再生に向けて尽力する活動を「マーシーの獲ったり狩ったり」のYouTubeチャンネル(チャンネル登録者数約34万人!)で全国に配信しています。
今回は「噂には聞いていた琵琶湖固有種を守る農業を一度見てみたかった!」と魚のゆりかご水田で開催された「生き物観察会」に参加しました。
水田に魚がいる!?琵琶湖の固有種を守る
滋賀県のプロジェクトとは
東近江市栗見出在家町の「魚のゆりかご水田」には、毎年たくさんの魚が琵琶湖からやってきます。「琵琶湖の固有種を守りたい」と地域の農家が中心となり、 同じ想いを持った人たちが協力して進めている「魚のゆりかご水田プロジェクト」。そのイベントに琵琶湖の環境を守るため、外来種の駆除に取り組むユーチューバーのマーシーさんが訪れました。
昭和40年頃まで琵琶湖湖岸の田んぼは、琵琶湖とつながっていました。魚は自由に田んぼと琵琶湖を行き来し、田んぼはフナやコイ、ナマズなどの魚の産卵育成の場所になっていました。しかし現代では、農業の改善や交通の利便性の向上を図るため、圃場や湖岸道路の整備が進み、魚が田んぼに入りづらい環境となりました。琵琶湖では外来魚の大繁殖も重なり、ここ数十年で固有種の魚が激減しました。昔から琵琶湖の魚は、地域の食卓を豊かにし、人々は琵琶湖と共生してきました。そこで滋賀県では、平成 18 年から人や生き物が安心して暮らせる田んぼを取り戻す取り組み「魚のゆりかご水田プロジェクト」を進めています。
田んぼは外来種が入ってきづらい、
固有種の生育に最適な場所
魚のゆりかご水田プロジェクトの生き物観察会では、子どもや学生など多くの人が参加し、田んぼでう化した稚魚などを採取して観察しました。網にはたくさんの稚魚が入り、マーシーさんは「琵琶湖固有種のニゴロブナやビワヨシノボリなどがいて、魚の餌となる赤虫もいる!」と生物の多様性が保たれていることを確認しました。参加者たちも大きなニゴロブナやナマズ、コアユなどを次々と見つけていました。
魚のゆりかご水田米の水路は、魚が琵琶湖から田んぼに入れるように水位を段階的に上げて、魚が遡上できる魚道にしています。プロジェクトのメンバー、琵琶湖博物館学芸員の金尾滋史さんは「田んぼは水温が高く、エサとなるプランクトンが多い。また、外来種などの外敵が少ないことから、田んぼで育った魚は琵琶湖の沿岸で育つよりも成長率が高い結果が出ています。また固有種の生態を脅かす外来魚は、水路を遡上する習性が無いと見られ、田んぼに入りづらく、入ってきても生きづらいようです。今年もこの水路で多くの固有種が確認できました。」と魚のゆりかご水田の成果を実感していました。
魚のゆりかご水田(琵琶湖システム)が世界農業遺産に。
魚にも琵琶湖にも人にも優しいお米
昨年(令和 4 年 7 月)に世界から高い評価を得て、魚のゆりかご水田プロジェクトをはじめとした漁業と農業が織りなす「琵琶湖システム」が世界農業遺産に認定されました。滋賀県独自の環境を生かした魚のゆりかご水田は、現在130ヘクタールの田んぼで栽培されています。滋賀県は、魚のゆりかご水田米を農薬の使用を通常の半分までと定め、安心できるお米として認定しています。このプロジェクトでは、4月に魚道を作り、5月には田植え、6月に生き物観察会、9月に稲刈り体験、10 月から12月にかけては PR や研究に取り組んでいます。農村振興課の園田敬太郎さんは「琵琶湖の環境保全をしながら育てているこのお米を、もっと地域の人々に届けたい。」と話しました。
生き物観察会では、生き物の採取の他、魚の勉強会や魚のゆりかご水田米の試食も行われました。試食した参加者たちは「いつも食べているお米より甘い。新鮮で美味しい。」と笑顔をみせていました。マーシーさんは「生物生態系の保全をしたいけど、何をしたら良いのかわからないという方がいます。お米を食べて農家さんを応援することが保全活動につながるのでは。」と呼び掛けました。
詳しくは下記「琵琶湖システム」のページをご覧ください