
2026年の大河ドラマ「豊臣兄弟 ! 」(NHK)。
天下人・豊臣秀吉の右腕として知られる弟・秀長を主人公にした新たな大河が幕を開けます。
そして、この物語には、滋賀が深く関わっています。
たとえば長浜は、秀吉と秀長がともに築いた町。安土、近江八幡、高島など、兄弟が足跡を残した場所が県内各地に点在します。
さらに今回のドラマでは、この兄弟を支えた“キーパーソン”たちにも注目が。
それが、石田三成と藤堂高虎。どちらも滋賀県ゆかりの武将であり、それぞれの信念と知略で豊臣政権を陰から支えました。
その2人を演じる俳優、松本怜生さん(石田三成 役)と佳久創さん(藤堂高虎 役)が、役作りのために実際に滋賀を訪問。歴史の舞台を歩き、何を感じたのか——今回はその様子をお届けします。
冷静沈着な“参謀”として豊臣家を支えた石田三成

冷静で知的、だけどちょっと生真面目すぎる——そんなイメージを持たれがちな石田三成。でも、彼の真価は頭脳で戦い、豊臣政権を支えたその“参謀力”にありました。

三成は現在の滋賀県長浜市生まれ。少年時代は寺で学問に励む、いわゆるエリート候補生でした。そんな彼が秀吉に見出されたのは、米原市の大原観音寺での「三献の茶」の逸話によるもの。最初はぬるめで量を多く、次に少し熱くし量を減らし、最後に熱々を少量——客の様子を見てお茶を出す機転に、秀吉はすっかり心を奪われたとか。
秀吉の側近になってからは、戦国でもめずらしい“事務方のスペシャリスト”として、兵士たちの食料や物資の手配、財政、外交までこなすマルチな才能を発揮。豊臣家の五奉行のひとりとして政務の中枢を担い、信頼の厚さは群を抜いていました。

しかし、正義感が強く曲がったことが嫌いな性格ゆえ、一部の武将たちとは対立も多く、関ヶ原の戦いでは敗北。その生涯を終えました。

そんな三成の人生をたどるように、今回、石田三成役の松本怜生さんが滋賀県内のゆかりの地を訪問。三献の茶の舞台として知られる「大原観音寺」や三成が秀吉に仕え始めた「長浜城」、鉄砲の産地国友の歴史を伝える「国友鉄砲ミュージアム」など、各地をめぐりながら三成の足跡を体感しました。
「知将」として知られる石田三成の、ちょっと不器用で、でもまっすぐな生き様。価値観が多様化している今の時代だからこそ、あらためて注目したくなる人物です。
実力で道を切りひらいた“築城の名人” 藤堂高虎

戦国武将の中でも、藤堂高虎ほど「柔軟」に生きた人物はいないかもしれません。彼がすごいのは、何度も主君を変えながらその都度しっかりと信頼を勝ち取り、結果的に大名としての地位を築き上げたところ。そしてもうひとつ、築城の名人としても知られています。

高虎は、現在の滋賀県甲良町出身。もとは地元の小豪族に仕える一兵卒でした。その真面目な働きぶりと、任されたことは必ずやり遂げる実直さで頭角を現した高虎は、やがて秀吉の弟・秀長に見出され、家臣となります。

秀長のもとでは城づくりから戦の準備まで幅広く任され、その一つひとつで確かな結果を残しました。特に築城では、今治城に海水を引き込んで船で城内に入れる“海城”構造を採用。伊賀上野城では、高さ30メートル超の巨大な石垣で防御力と威圧感を両立させ、敵の戦意をくじいたといわれています。守りやすく使いやすい、まさに「実戦で機能する城」をつくり上げたのです。

今回は、藤堂高虎を演じる佳久創さんがゆかりの地を訪問。高虎が築城を学んだ地にある「安土城天主 信長の館」、高虎が生まれ育った「甲良町」、若き日に戦った「姉川古戦場」などを訪れ、その足跡に触れました。
1人の主君に支えるよりも、変化に対応しながら実力で信頼を勝ち取った高虎。現代にも通じる“しなやかさ”を持つ人物として、ドラマの中でどう描かれるのか注目です!
三成と高虎の足跡をたどって。見えてきた役づくりのヒント
石田三成 役 松本怜生さんインタビュー

三成の足跡をたどる中で、松本さんはその人物像にどんなことを感じたのでしょう。現地で感じた空気や、役に向き合う思いをうかがいました。
「いちばん印象に残ったのは大原観音寺です。秀吉がこの道を上ってきて、その先に三成がいて、井戸から水を汲んでお茶を出して…という想像が広がった場所。ちゃんと目に焼き付けたいなと思いながら見て回りました」

続いて、役への思いについても聞いてみました。
「三成が頭がいいのは、誰もが知っている部分。それをどう演じるかはこれからなので、たくさんの先輩方が演じられてきた過去の姿を全部吸収するつもりで、自分が一番三成を知っているぞ!と言える状態で挑みたいと思います」
歴史ファンからの人気も高い石田三成という役に向き合う、その覚悟は確か。松本さんの探究心から見えてくる新たな三成像に、期待が高まります。
藤堂高虎 役 佳久創さんインタビュー

地元の人々に慕われた高虎の足跡を追いながら、その魅力に触れた佳久さん。現地での気づきや、ご自身との共通点について語ってくれました。
「実際に甲良町に行って、高虎が地元の方にすごく慕われているのを感じました。築城の腕前や戦の強さだけでなく、人柄にもその理由があるのかなって。人々に愛される、魅力ある人物だったという発見がありました」

さらに、自身との共通点にも気づいたそう。
「築城に関しては、秀長に言われて勉強を始め、興味を持ってどんどん知識を広げていったと聞いて。僕も知りたいことがあったらとことん調べちゃうタイプなので、そういうところはちょっと似てるなと思いました」
どこか親しみやすさを感じさせる高虎の一面に気づいた佳久さん。この役をどう演じるのか、ドラマでの表現に注目です。
「豊臣兄弟 ! 」で滋賀がもっと好きになる!

秀長を主人公に、兄弟の絆と2人のサクセスストーリーを描く大河ドラマ「豊臣兄弟 ! 」。その陰には、兄弟を支えた“もうひとりの主役たち”——石田三成と藤堂高虎の存在がありました。
歴史ファンからも注目されるこの2人が、実はどちらも滋賀県出身。彼らが活躍した時代の名残を今も間近で感じられるのは、滋賀県ならではの魅力です。
ゆかりの地を訪ねたり、少しでも人物について知っておくと、ドラマがもっと深く楽しめるはず。「この場所がドラマにどう映るのか楽しみ!」、「このエピソードって地元の話だったんだ」なんて発見もきっとあるはずです。
2026年の大河ドラマは、滋賀県が舞台のひとつ。地元だからこそ味わえる楽しみ方を、あなたも見つけてみませんか?放送が待ち遠しいですね!
(文・林由佳里/松本怜央さん:写真提供・北近江豊臣博覧会実行委員会/佳久創さん:撮影・辻村 耕司/編集・しがトコ編集部)
