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滋賀を愛した建築家ヴォーリズ 来日120年、改めて感じるその魅力

2025年11月26日

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(提供:公益財団法人近江兄弟社)

「ヴォーリズ」について、みなさんはどれほどご存知ですか?
名前は聞いたことがある。建築家として有名な人らしい。そんなイメージをお持ちの方も多いかもしれません。

ウィリアム・メレル・ヴォーリズ。彼は、キリスト教の伝道師として日本にやってきた一人のアメリカ人青年でした。
でもじつは、建築だけでなく、教育、医療、実業など、多方面にわたって滋賀県や、近江八幡の地域のために貢献した人物です。

2025年は、そんなヴォーリズが来日し、近江八幡の街に降り立ってから120年。この節目の年に、一緒にヴォーリズの軌跡をたどってみませんか?

24歳の青年が降り立った近江八幡

時は1905年(明治38年)2月2日。アメリカから一人の青年が日本にやってきました。ヴォーリズ、24歳のときのことです。

当時のYMCA(キリスト教青年会)の紹介で、彼が赴任したのが近江八幡。滋賀県立八幡商業学校(現・八幡商業高校)の英語教師として、この地での生活が始まりました。

名前も顔も、言葉も習慣も違う、遠い異国の地。最初は不安でいっぱいだったかもしれません。でも、ヴォーリズは近江八幡の街と人々に深く魅了されていきます。

けれど、わずか2年で教職を辞職してしまいます。理由は、リスト教の伝道に熱心すぎたため。宗教と教育の分離という当時の方針に反してしまったんですね。

八幡商業高校バイブルクラス(八幡神社にて撮影)。前から3列目、左から4人目に写っているのがヴォーリズです。

しかし、ヴォーリズは近江八幡を去りませんでした。

「この地こそが、私の居場所だ」

そう信じた彼は、近江八幡に居続ける道を選択。
もともと建築家を志していたこともあり、彼が後に「世界の中心」と呼んだこの場所で、建築の夢を描き始めたのです。

「今いる場所から世界を良くする」—ヴォーリズの多彩な顔

ヴォーリズの凄いところは、一つの分野にとどまらなかったこと。建築、実業、医療、教育__彼の活動は驚くほど多岐にわたります。

建築家として

大丸心斎橋店
神戸女学院大学講堂

大阪の大丸心斎橋店、あの立派な建物もヴォーリズの設計。他にも、大同生命ビル、関西学院大学、神戸女学院大学、同志社大学、大阪教会など、滋賀県内だけでなく、全国に数多くの名建築を残しています。

ヴォーリズが手掛けた建築はなんと2500軒以上!今なお全国に200軒以上の建物が現存し、そのうち半分ほどが文化財に指定。
機能的でありながら美しいヴォーリズの建物は、今も多くの人々に愛されています。

実業家として

ヴォーリズ学園

塗り薬の「メンソレータム」(現・近江兄弟社「メンターム」)、使ったことはありますか? じつは、このメンソレータムを日本に広めたのもヴォーリズなんです。
近江八幡にある「ヴォーリズ記念病院」や「ヴォーリズ学園」もヴォーリズ夫妻が設立したもの。
日本に初めてハモンドオルガンを輸入したのもヴォーリズ。

建築だけでなく、医療、教育、音楽と幅広い分野で、近江八幡に新しい風を吹き込みました。

ヴォーリズ記念館の藪秀実館長は、こう語ります。

「ヴォーリズの哲学は『今いる場所から世界を良くする』というものでした。彼は近江八幡という地域を『世界の中心』と考え、この場所から理想の社会を実現したい。それがすなわち、神の国に通じると考えていたんです」

お金を稼ぐための事業ではなく、人々が幸せに暮らせる場所を作るための事業。そんな思いが、ヴォーリズの活動すべてに込められていました。

滋賀に残るヴォーリズ建築をめぐる旅

では、ここからは実際に滋賀県内に残るヴォーリズ建築を見ていきましょう。今もなお私たちの暮らしの中に息づいている、彼の足跡です。

近江八幡市:ヴォーリズの心の故郷

近江八幡には、市民の手によりヴォーリズ建築が大切に保存・修復され、見学できる形で公開されています。

出町通り沿いにある『旧八幡郵便局』もそのひとつ。スパニッシュ様式を基調としながらも和の要素を取り入れた、和洋折衷のデザインが特徴です。
現在はギャラリーやイベント会場としても活用されています。

ヴォーリズ夫妻が人生の後半を過ごした邸宅は、現在は『ヴォーリズ記念館(一柳記念館)』として公開されていて、ヴォーリズゆかりの資料が展示されています。

ヴォーリズの設計第一号の『アンドリュース記念館』。ヴォーリズの資金と若くして亡くなった友人・アンドリュースの遺族より贈られた資金を基に、八幡YMCA会館として1907年に竣工されました。
普段は外観しか見れませんが、春と秋には館内も特別公開されます。

豊郷町:アニメファンの聖地『旧豊郷小学校』

豊郷町にある『旧豊郷小学校』は、アニメ『けいおん!』の舞台のモデルとしても有名です。
白亜の美しい校舎は、当時、“東洋一の小学校”と称されていました。階段の手すり、廊下、教室など、細部までこだわり抜いて設計されていて、ヴォーリズの「子どもたちのために」という想いが感じられます。
現在は一般公開されており、自由に見学できるので、ぜひ訪れてみてください。

高島市:ヴォーリズ通り

今津ヴォーリズ資料館
旧今津郵便局

高島市には、ヴォーリズ通りと呼ばれる通りがあります。
『今津ヴォーリズ資料館』、『旧今津郵便局』、『今津教会』の3つの建物が、やさしくまちに溶け込みます。

甲賀市:旧水口図書館

旧水口図書館
水口教会

甲賀市にも『旧水口図書館』や『水口教会』など、市民の手により保存され、いまも現役で活用されている建物があります。


こうして見てみると、ヴォーリズ建築は「過去の遺産」ではなく、今もなお現役で人々の生活に寄り添っているんですね。
県内にはまだまだたくさんのヴォーリズ建築があります。あなたも、お休みの日にヴォーリズ建築めぐりの旅に出てみませんか?

今も生きるヴォーリズ精神

ヴォーリズが残したのは、建築だけではありません。彼の思想や哲学は、今もこの地に息づいています。

「この『マルに点』という図はヴォーリズが書いたものなんですけど、これが何を意味してるか分かりますか?」

「じつはこれが、ヴォーリズのサインなんです。
真ん中にある小さな点が、『近江八幡』を表している。
ようするに『近江八幡は世界の中心』ということを言いたいんですね」

ヴォーリズは『今いる場所から世界を良くする』という信念を持っていました。
母国アメリカじゃなくても、東京や大阪などの大都市じゃなくても、どんな場所でもそこに暮らす人々が力を合わせれば、世界を良くしていける——それがヴォーリズの考え方。

2025年、ヴォーリズ来日120周年。
改めて彼の足跡をたどってみると、「すごいよね、滋賀県」という気持ちが自然と湧いてきます。

ヴォーリズが愛したこの滋賀の地には、今も彼の想いが受け継がれているのです。
あなたも、ヴォーリズが残した建築や思想に触れてみませんか?

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