文化・スポーツ

おうみのいろどりvol.2 江戸落語家 三遊亭わん丈さん(2023年夏号)

2023年08月01日

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滋賀プラスワンで伝えきれなかった裏話もお届け!

魅力がたくさん詰まった滋賀! 落語を通して伝えていきたい

Wanjo Sanyutei
江戸落語家 三遊亭 わん丈 さん


1982年生、大津市出身。滋賀県初の江戸落語家。落語協会所属の二ッ目。
滑稽噺、人情噺、怪談噺、芝居噺など古典から自作まで幅広いネタをもち、滋賀にまつわる落語も数多く口演。2024年3月より落語協会12年ぶりの抜擢真打昇進が決まっている。

[ 芸 歴 ]
2011年4月 三遊亭 円丈に入門(没後 天どん門下)
2012年4月 前座となる 前座名「わん丈」
2016年5月 二ッ目昇進
2024年3月 真打昇進予定
 
[ 受 賞 ]
2017年8月 NHKラジオ「真夏の話術 2017」優勝
2019年12月 Zabu-1グランプリ優勝
2020年9月 第31回北とぴあ若手落語家競演会 大賞
2022年11月 大津市文化奨励賞
2023年2月 第1回公推協杯全国若手落語家選手権大会 大賞
2023年4月 令和4年度彩の国落語大賞

12年ぶりの「抜擢」で15人を抜いて2024年3月の「真打」昇進が決まった三遊亭わん丈さんは、初の滋賀出身の江戸落語家です。破竹の勢いで活躍するわん丈さんに、落語の魅力と、琵琶湖や滋賀への想いを語っていただきました。

27歳で落語の世界へ

落語家を志したのは27歳。それまでは落語を見たこともなくて、初めてライブで江戸落語を見たのがきっかけでした。

実は、大学で始めたバンド活動が高じて、歌手になりたいという夢を追っていました。でも、うまくいかなくて。それでも芸能に携わりたくて、ラジオの仕事の足がかりとして落語家に…と考えました。そんな想いで見た落語に感動して、「この芸がしたい!」の一心で、落語の世界に飛び込んだんです!

それから、もう一つ落語家になろうと思った理由が、落語を見に行った時に、出てくる落語家の方がみんな太っていて、「この仕事なら食べていけるな」と思ったからなんです(笑)

僕が感じる落語の魅力は、あったかさです。特に古典落語は、モノが豊かじゃなかったが故に、人の心がものすごく豊かで助け合ってる。落語は疲れた心を癒やしてくれるんです。

弟子入り志願も派手に

弟子入りをお願いしても普通3回は断られると聞いたので、いい機会が来るのを待ちました。有名な師匠が一堂に顔をそろえるときを狙って、皆さんの前で派手に円丈に弟子入り志願したんです。

履歴書を持って行きましたが、「履歴書とかはいいんだ。新作落語は書けるの?」と言われ、「えっいきなり?」と思って。でもちょうど、6時間前に弟子がやめたところだったのでタイミングもよく、すぐに名刺をいただくことができたんです。

それでも、師匠に弟子と認めてもらうまでは3か月かかりました。でも、なんとか弟子にしてもらうことができました。

夢をあきらめた先に別の道が

夢は絶対にあきらめてはいけないという想いで音楽をやっていて、一人でずっと苦しんでいました。そんな僕にとって、落語の世界は、自分で師匠を選べて、ご飯を食べさせてもらえて、お稽古をつけてもらえる。本当にあったかい世界だと感じました。
だから、皆さんに伝えたい、「叩いても崩せへん壁は避けたらええ」と。僕は、挫折しても気持ちを切り替えて(壁を避けて)進んだから、もっと自分に向いた道がみつかりました!

滋賀出身で江戸落語家になったのは、たまたま最初に見たのが江戸落語だったからです。江戸の言葉は関西弁とは全く違うので、歌を覚えるような感じで習得しました。もし、上方落語に入門していたら、大阪の言葉とは微妙に違う滋賀のイントネーションに引っ張られて、もっと苦労したと思います。

SDGs落語に込めた想い

6年前からSDGs活動の一環として、大津で生まれ育った僕だからこそできる生ゴミや海洋ゴミを題材にした落語を始めました。
琵琶湖は今すごくきれいですけど、35年前は汚かったんですよ。僕も同級生と一緒にゴミ拾いをしたり、外来魚の駆除をしました。琵琶湖をきれいにする意識を子どもたちみんなが持っていました。教育の賜物ですね。
みんなでがんばれば水はきれいになる。その感覚を子どもたちにも伝えたいんです。

落語は映像がないから、本を読む感じに近いんですよ。想像力を働かせなくてはいけない。その分だけ、子どもでも内容が身体にスッと入ってくる。そうした落語の魅力も知ってほしくて、毎年、大津での落語会に親子を無料で招待しています。

滋賀出身の熱量で伝えたい

昔はよくやっていたのに、最近ではあまり口演されることのなくなった滋賀ゆかりの古典落語を発掘して、「近江八景」や「お多賀さん」をやっています。滋賀を知っているから、ここはもっと補足しておもしろくできるなとか考えながら、滋賀出身の僕だからこその熱量を込めて滋賀の魅力を伝えていきたいです。

落語の中で、滋賀はめちゃくちゃいい場所として描かれているんですよ。「近江八景」を聴いた師匠から「いいところで生まれたんだね」と言っていただいて、落語を通じて滋賀のすばらしさを改めて感じています。
僕の滋賀での落語会に来たお客さまが、舞台となった場所を「聖地巡礼」したり、長浜や高島、信楽などにも足を伸ばしていただいたりと、少しずつですが経済効果を生み出せているという感覚もあって嬉しく思っています。

「大人の魅力」がたっぷり

東京から大津の実家に帰ると、寝転がって星を眺めます。大津でも星がきれいやなと思ってたんですけど、高島に行ってびっくりしました、星空がきれいすぎて。
僕が帰省すると、みんなで家の近所のお店で近江牛と鰻を食べるのが、わが家の恒例になっています。円楽師匠もその鰻を食べて、おいしくてびっくりしたはったんですよ。
お稽古をつけていただくたびに、師匠に感謝の気持ちを込めて、滋賀の和菓子をお渡ししています。「これ、おいしいよね」とすごく喜んでくださるんですよ。
着物にまつわるものもいろいろあって、滋賀県産の素材で作られた扇子、織物もすてきですね。
滋賀は「大人の魅力」が詰まってます!

滋賀の色を打ち出したお披露目に

真打のお披露目では、滋賀の色をバーンと打ち出すつもりです。後ろ幕は滋賀らしい意匠にして、舞台に滋賀の地酒の酒俵などを並べようと思っています。

これから、もっと滋賀の各地で落語を気軽に見てもらえるような環境をつくっていきたいと考えています。

滋賀のためにがんばります!

©️Takumi Tezuka

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