気象予報士・キャスター
久保井 朝美さん
気象予報士でキャスターの久保井朝美さんは、城好きの「城ガール」としても活躍しています。歴史の深い滋賀県には、貴重な城跡が多数あり、何度も訪れてしまう場所だと久保井さんは語ります。城好きにとって織田信長が築城した安土城は特別な場所。ベールに包まれた安土城の更なる解明が期待される「令和の大調査」を前に、久保井さんが専門家と共に、滋賀県立安土城考古博物館と安土城跡からリポートしました。
安土城の天主が倒壊した場所が初めて発掘されます
滋賀県は、昭和・平成と「安土城跡」の調査を進めてきましたが、未だ史跡全体の 8 割が未調査となっています。そのため令和 5 年度、謎に包まれた安土城の実像を解明するため、滋賀県は 20 年に渡る「幻の安土城」復元プロジェクトに乗り出しました。「令和の大調査」では、今まで未着手だった天主が炎上して倒壊したとされる天主台北側も発掘されます。今回は、城好きで気象予報士・キャスターの久保井朝美さんが、滋賀県立安土城考古博物館と安土城跡を訪れました。
織田信長が築城した安土城は、滋賀県近江八幡市の標高 198m の安土山全体に城郭遺構が分布されており、昭和 27 年に国の特別史跡となりました。1582年の「本能寺の変」で信長は襲撃され、安土城は同じ年に天主などが焼失し、築城開始から 10 年足らずで廃城となりました。安土城に関わる史料はほとんど残されておらず、発掘調査で出土した安土城の瓦や柱跡である礎石等は、安土城の実態の確証をつかむ手がかりとなっています。
発掘調査前の大手口と城内を結ぶ大手道は、平成の調査までは幕末の火事で燃え再建された摠見寺の石垣で遮断されていましたが、平成 6 年の調査で解体され、築城時の道が検出し復元されました。滋賀県立安土城考古博物館を案内された学芸課の藤﨑髙志さんは「信長の肖像画は様々なイメージによりたくさん描かれ、どれが本当なのかは今ではわかりません。一方、安土城の天主跡はそのままで残っていることが平成の調査でわかりました。天主が倒れた方向の調査は初めてなので、新たな解明に繋がるかもしれません。」と令和の調査に期待しました。
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安土城跡の発掘で、当時の状況が明らかに
安土城跡は、滋賀県文化財保護課の岩橋隆浩さんにガイドしていただきました。以前の発掘調査では、築城当時のものと考えられる大手道が発掘され、石段に使われた石像物も出土しています。岩橋さんは「石像は山から発掘した石では足りず、持って来て使われたもの。日本全国のお城でも同じように石仏や墓石が石材として使われています。」と説明しました。羽柴秀吉邸跡・前田利家邸跡からは建物の柱となる礎石が検出され、羽柴秀吉邸跡では全ての建物構成が明らかになっています。
二の丸の石垣は、ほぼ 450 年前に積まれたそのままの状態で残っています。その上には、1583 年に羽柴秀吉によって建立された織田信長のお墓である織田信長公本廟があり、信長公が他所より移築し自らの菩提寺とした摠見寺が今も守り続けています。岩橋さんは「摠見寺さんがここを神聖な場所として弔われ続けていたからこそ、今もこうして安土城跡が残っています。」と話しました。
信長の旧臣が記した『信長公記』では、安土城の天主は 5 層 7 階（地上 6 階、地下 1 階）で高さが約 32 メートルもあったとされています。天主跡には、天主の柱を支えていた大きな礎石が並び、中にはひっくり返った礎石もあります。これは柱が倒れた時に大きな力が生じて動いたもので、これにより天主は主に北の方向に倒れたと推測されています。
リポーターの久保井朝美さんは天主跡からの景色を見て「織田信長は天主に住んだ最初で最後の人と言われているので、信長も当時ここで壮大な琵琶湖を眺めていたのでしょうか。ロマンが今もここに残っています。」と話しました。
◆詳しい復元プロジェクトの計画と整備場所の地図は以下よりご確認ください。（概要版）◆
