文化・スポーツ

紫式部と平安を感じる滋賀の伝統工芸

2024年02月29日

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書道家で書道パフォーマー 青柳 美扇さん

書道家であり、世界10ヵ国以上の企画やイベントで書道パフォーマンスを披露している青柳美扇さんは、書道を通じて日本の伝統文化の魅力を広めています。
高島市で受け継がれている伝統工芸「巻筆」と「高島扇骨」の職人の技を青柳さんがリポートします。

滋賀県各地に残る紫式部の縁

NHK大河ドラマ「光る君へ」は紫式部の生涯を描いたものであり、あらためて平安時代の歴史と魅力に注目が集まっています。大津市にある石山寺は紫式部が参籠し、源氏物語を起筆した場所といわれており、境内では「光る君へ びわ湖大津 大河ドラマ館」がオープンしました。滋賀県には数多くの紫式部ゆかりの地があり、平安文化を感じる伝統技術が継承されています。今回は書道家の青柳美扇さんが、高島市で伝わる「巻筆」と「高島扇骨」をリポートしました。

平安時代にも使われた
「巻筆」の製法を継承

攀桂堂(はんけいどう)では、創業以来400 年「巻筆(まきふで)」という平安時代の高級筆の製法を継承しています。巻筆とは芯となる毛を和紙で巻き、さらに上毛を掛け重ねていく筆作りで、江戸時代末までは主流の製法でした。しかし明治に入ってから、根元まで水を含ます事が出来る水筆(すいひつ)の製法が主流になっています。

攀桂堂(はんけいどう)
アクセス:滋賀県高島市安曇川町上小川90−6

巻筆は今でも皇族をはじめ伝統を守る人々に愛用されており、攀桂堂には伝統的な巻筆を求めて、世界各地から多くの人が訪れています。また、奈良時代 東大寺大仏の完成を祝う際、だるまのように大仏の瞳を入れる「大仏開眼供養」にも巻筆が使われました。青柳さんは、開眼に使われた復元模造の特大筆を見て、大きさと珍しさに驚きました。

世界で唯一となった
製法を受け継ぐ筆師

巻筆は先が繊細にまとまっており、細やかな作業を繰り返して作られます。今では15代目藤野雲平さんと長男の純一さんが世界で唯一、巻筆の製法を受け継いでいます。
藤野雲平さんは「この技法は400年前から先祖代々に伝わり、細い筆も太い筆も昔と同じ技法で作っています」と説明しました。青柳さんは伝統のある巻筆の技術を見て「一つひとつの手作業に、歴史を感じます」と思いを馳せました。

書道家の青柳さんは、巻筆でかな文字を書き「芯が効いていて書きやすい。筆のまとまりがあり墨含みも良く、割れることなくスムーズに書くことができる」と巻筆の書き心地の良さを実感しました。日本古来の巻筆の技法は、昔のものをそのままの作り方で、鍛錬を重ねた職人の手から手へと繋げられています。

全国でトップの扇骨作りの町

高島市安曇川町では多くの扇子が作られており、扇子の骨の部分「扇骨」の生産は、全国で90%以上のシェアを誇ります。青柳さんは、高島扇骨の歴史を知るために60年近い職人歴を持つ、すいた扇子の吹田政雄さんをたずねました。すいた扇子では多彩なオリジナルの扇子をはじめ、大津絵扇子、近江八景扇子など滋賀県にちなんだ絵柄の扇子も取り揃えられています。

すいた扇子
アクセス:滋賀県高島市安曇川町西万木62

高島市で扇骨が作られるようになったのは、今から約350年ほど前のこと。高島市を流れる安曇川の氾濫を防ぐために堤防へ竹が植えられました。その竹が良質だったことから扇骨が作られるようになり、高島市は扇骨の町として全国に知れ渡るようにりました。

扇子は多くの職人の技術で
繋ぎ作られる

扇子作りは竹を切ることから始まり、それぞれの職人が18の細かな仕事に分業して行っています。青柳さんは、工房で締直しという工程を見学しました。この工程は専門的な工具を使い、職人の技で竹をしなやかに加工し、艶のあるものに仕上げます。青柳さんは「ザラザラだった竹がすべすべになった!」と感動しました。

すいた扇子では小学生の地場産業の学びとして、扇子の絵付け体験の受け入れも行っています。その絵付けを体験した青柳さんは「すごく勉強になり楽しかった」と扇子に紫式部をイメージした和歌と絵柄を書き上げました。

紫式部が琵琶湖を見て詠んだ和歌

青柳さんが扇子に書いた紫式部の和歌は、白鬚神社の石碑にあります。「三尾の海に あみひくたみのてまもなく 立居につけて都恋しも」。長徳2年(996年)、越前国司となった父とともに琵琶湖を船で渡る途中、高島の三尾崎というところで網を引く漁民の姿を見ていると、「ここはもう都ではないのだ」と思い、都が恋しいと詠んだものだそうです。 滋賀県には、今でも数多くの奥深い歴史文化が各地に残っています。皆さんも、ぜひ紫式部のゆかりの地をめぐり時代のおもかげを感じてください。

白鬚神社
アクセス:滋賀県高島市鵜川215

▶滋賀県の伝統的工芸品について(滋賀県商工観光労働部モノづくり振興課HP)

https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/shigotosangyou/kigyou/20017.html

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